『霜月まつり』   宮本 辰雄/写真・文  信濃教育出版部/刊

 霜月まつりは、「遠山まつり」の別称で知られる長野県南の民俗行事。重要無形文化財に指定された湯立神楽(ゆたてかぐら)である。伊那山地と赤石山脈に挟まれた遠山谷に、江戸時代から伝わる山村の祭を、その次第を忠実に逐いながら写真と簡潔なコメントによって再現した本書は、霜月まつりを知らぬ読者にも、緻密な臨場感を醸してバーチャリィに迫ってくる。

 遠山郷を南北に抜ける国道152号線沿いには17の神社が散在するが、現在は13社のみが湯立と面方(おもてがた)の舞を神事として行う。その様式は和田、木沢、上町、下栗の四社のタイプに集約されるというが、本書に収められたのは木沢と上町の神事である。

 著者の写真家宮本貞雄氏は、遠山谷に入って7年の歳月を費し、霜月まつりを撮りつづけた。湯釜を据えるかまど造りと新しい注連(しめ)縄つくりに始まる祭の端初から、座揃え火入れと続き、湯立ての舞面(おもて)の舞のクライマックスを経て直来(なおらい)の夜明けに至る遠山在の人々の熱気を、余すところなく映像にとどめたのも、7年の地域への密着なくしては得られなかった結果と思う。遠山びとと著者のこころは、まつりを通じて一つになったのであろう。それにしても祭をかなめに結ばれる遠山在所のひとびとの絆は、地域共同体などという月並みなことばを越えて強く逞しく感じられるのである。

 巻末に添えられた伊那の民俗学者向山雅重氏のまつりの意義と次第の解説と共に、「霜月まつり」を初見しようと期する読者には必読の写真文集である。
(Y.Y)


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